Sunday, August 7, 2011

科学と神秘

面白い本だったので紹介します。

生物学者と仏教学者 七つの対論
斎藤成也・佐々木閑 共著

 

科学と仏教を比較し論理的に双方を説明している本です。以前佐々木閑氏の本は読み、仏教の解釈の説明のわかりやすさに感動しました。この佐々木氏の本は癌でなくなった戸塚洋二先生のブログで紹介されていた「犀の角たち」です。その筆者と生粋の科学者であり生物学者であるもう一人の筆者の対論とあり、手にとらずにいられませんでした。

以下が特に注目した内容を自分の意見を入れ箇条書きしたものです。

  • キリスト教: 物質世界に神の足跡を。しかしやってもやっても思惑外れるため、その探求が科学のエネルギーとなったと考えられる。仏教: その世界に対してどう対処していくかを考える、臨床的考え方である。なぜなら、前提においてこの世界における超越者という存在が仏教ではないからである。
  • 基礎研究は重要であるが、臨床研究は統計的結果論の集合である。どちらも重要であるが、科学者としては前者の法則を見出したいものである。
  • 論理の枠ではおさまらない事象があることを認めつつ、論理で説明できる領域を広げることにある。
  • 仏教も科学もこの世の中に法則性を見出すということでは類似した概念がある。しかし仏教はその法則性を精神面に求め、科学は物質世界に求めた。
  • 論理の低い部分では権威が横行する。
  • 科学で説明できない現象を認めることが神秘主義であり、科学者はそうあるべきか。

これを読むことで、科学者という職業のスタンスを改めて考えました。理学療法もアスレチックトレーニングも多くの事実が、論理的に説明できず統計的に経験的 に理由付けしています。科学と呼べる範囲を広げて、世間との共通言語をこの分野でも増やすことで、治療に生かしたいです。神秘的なところにも耳を傾けなが ら。