Sunday, October 14, 2012

ここには今

フィリピン人理学療法士の人数がアメリカで増加しています。たまたま彼らと長く過ごす時間がありました。英語はうまくスペイン語も理解でき中国語もかじっているという言語能力の高さには大変驚きました。それも歴史に基づいているのでしょうが、彼らの大きな強みです。理学療法や医学教育はすべて英語で行われていることもあり、他の国よりはアメリカ免許への適用が容易なようです。アメリカでは理学療法士が不足しているという現実があります。特に慢性期を扱う訪問や施設ではそれが顕著です。それらもあわせて優秀なフィリピン人はアメリカに永住するという選択をとっているようです。聞いた話では1クラス75%がアメリカ永住という大学もあるようです。人数として次に上がるのはインド人でしょうか。

確認はとっていませんが今回フィリピン人に聞いた話によるとフィリピンは学士以上でしか理学療法は取れませんが、それも高等教育卒業後の5年の教育のようです。単位と時間的に修士と同じレベルとフィリピン人の知人は言っていました。

話は変わって今年のIFOMPTはカナダでありましたが、そこでは理学療法人口に見合った貢献を日本人はできていません。ポスターは何人かいるものの口頭や教育講演をして理学療法の発展を担っている人はいませんでした。アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアがほとんどです。どれだけの人が日本人PTを知っているでしょうか。論文を見る限り日本人医師は大いに世界的に医学に貢献しています。理学療法も医学の一分野になろうとしています。頑張らないといけないですね。

Friday, September 28, 2012

フィラデルフィアへ


紆余曲折を経て、転職することになりました。10月よりペンシルベニア州はフィラデルフィアでPTとして働きます。現在は引っ越しや手続きも落ち着いて、来週月曜から始まるトレーニングという名の仕事に備えてド緊張しているところです。新しい職場や人間関係、整形外科とはまた違う現場なのでそこに対する適応に不安を抱いているところです。

転職活動は5月に始めました。そして 8月初めに雇用先が決まりました。いやー、いろんな意味で大変でした。

理学療法士免許ですが、ニューヨーク州からフィラデルフィアのあるペンシルバニア州に移るための新たな免許の申請が必要でした。日本の免許をもとに米国免許を取った私には少し気をつけなければならない部分。ニューヨーク州より必要とされている大学院でのクラス単位の基準が高いということ。これは運良くオンラインでとっていたもので補うことができました。他の多くの州で必要とされているTOEFLスピーキング26点という難関がこの州にはないことが功を奏しました。しかし、移行の手続きを開始してから2ヶ月は要しました。早めの準備が大切ですね。アスレチックトレーナーの免許は州間での発行基準の違いがなかったので難なくすみました。

次の曲者はビザです。今回は前回と同様のH1B cap exemptでしたので移行という形での申請でした。転職で気をつけなければならないのが、就職先/就職希望先がcap exemptcap subjectかで時期や手続きが大きく変わってくるというところです。詳しくはまたどこかで。また、今回は永住権を保証することも条件にこの就職口を頂いたのでそれに向けての申請書類などの準備も大変でした。日本からの公式な書類はすべて自分の手元に原文を揃えておくということが大切だと改めて感じました。

これから働く場所はSkilled Nursing Facilityとよばれる施設です。 亜急性期から慢性期の治療とリハビリを行うケア施設という感じでしょうか。患者層は高齢者で心血管、神経、整形などなどと広範囲ということです。この施設の保険の利用の仕方は前勤務先の外来整形とは異なります。またイチから勉強し直さなければならない分野も多いですが、、がんばります。いい経験になりそうです。

トレーナーとしても近くの大学でボランティア活動をさせてもらい技術や知識を磨く予定で話もついていますが、そんな余裕が自分にあるのか不安です。不安だらけの船出です。

Friday, March 23, 2012

アメリカでPT免許移行して働くための道標

外国PT免許(例えば日本のPT免許)をアメリカPT免許へ移行してビザ獲得までの情報をまとめたサイトがあったので紹介します。

インド人のためのアメリカPTへの道

素晴らしく情報がまとめられているのでFCCPTのサイトと一緒に参考にすることで日本人にとっても役立つと思います。免許の移行は州による基準がありますが、PTとしてビザまたはグリーンカードを獲得するにはFCCPTのTypeI Evaluationのクリアすること(Healthcare Worker Certificationの獲得)が全州で必須です。結局はいつ卒業したとしてもCWT5の基準に達していなければならないと思います。その基準はこちらです。

CWT5

テクニカルなことですが、参考になればと思います。 

Saturday, February 25, 2012

国を動かす力

"パブリックヘルス 市民が変える医療社会 アメリカ医療改革の現場から" 細田満和子著の中ではアメリカの医療現場の現状を社会的な視点から広範囲にわたって紹介されています。その中で、社会を動かすためのアプローチの違いを国ごとに紹介していました。医療や環境改革をアメリカは市民団体や専門家の団体が豊富な資金で研究広報をおこなって政治家たちに訴えています。日本では国側が力の弱い市民団体などと手を組み社会をより良い方向に導こうとしている現状があります。アメリカの主導は市民や専門家たちで、日本の制度設計の主導は国です。

それを考えると、リハビリや感染症予防などの制度改革に対して、力を持っているのは厚労省になりますが、それが正しいのでしょうか。介護保険や維持期のリハビリの問題が示唆されている現状で、それに意見していくのが現場にいる理学療法士たちでしょう。理学療法士たちの教育や臨床力も医療制度や教育制度の影響をもろに受けます。国自体にも大いに問題はありますが、もっと理学療法士団体、他の市民団体の発言力・影響力を高めていく必要性を再認識しました。たしかにアメリカの州の理学療法士協会やAPTAなどにはそれを専門に走り回っている人が多くいますし、報告もしています。社会的仕組みは違えど、今の日本のバランスがベストでないことは確かだと思います。

スポーツ医学においても、AEDの普及や熱中症などの予防、応急処置のリテラシーなどやるべきことを多くありますが、それにも国の意向と多くの専門職団体の利害が邪魔をしていると聞きます。最終目的は何なのか(健康維持・傷害予防)もう一度確認して団体間の協力をもち、その力を強めた上で国に働きかけることが今できることかもしれません。

Friday, February 17, 2012

科学界の公用語

竹内薫氏が著書“科学嫌いが日本を滅ぼす”で、科学において言語として英語が席巻している中、日本人が戦っていくことに対してこう書いています。ノーベル賞を受賞した益川氏がなぜ受賞できたかというと小林誠氏という共同研究者が英語で論文をかけたからだろう。それを踏まえて、日本人に必要なのは英語を操る術ではなく通訳する人といかに協力して英語で発信とコミュニケーションを取っていくことかである、ということも述べています。

理学療法でもアスレチックトレーナーの分野でも、英語そこまでできないけれど優秀な研究者や臨床家は山ほどいますし、英語が堪能な日本人療法士やトレーナーもたくさんいます。ですから、英語論文を読む方法を学べとか読めとかいうことも重要ですが、この2グループの協力を日本全体でやっていくことが、日本が世界と協力してリハビリテーションやスポーツ医学の発展にコメディカルの立場から貢献していく方法なのかもしれません。日本理学療法士協会にはThe Journal of the Japanese Physical Therapy Associationという素材はありますし、人材もたくさんいます。協会や教育機関はその活用をもっとすればいいのかもしれません。

Saturday, February 11, 2012

疼痛の理学療法

理学療法士一人ひとりそれぞれの評価と治療コンセプトを持っていて各々の経験や学んだことから患者に対してアプローチしています。しかし、僕は今の科学で証明されていることを使うことは医療者としての最低限のルールだと思っています。そのプラスアルファを個々でやっていけばというのが今の考えです。

そこで必要とされるのが最新の知見と医学的根拠に基づいた治療のガイドラインや日々の研鑽(最新の雑誌を読むなどの)ですがそれも日に日に古くなったり、時間や労力に限りがあるでしょう。雑誌を全部読むなんて無理ですよね。

そこで整形外科的疼痛に対する理学療法で今アメリカの最低ラインの治療を紹介しているのが”Mechanisms and Management of Pain for the Physical Therapist" Kathleen A. Sluka Editor IASPです。腰痛や頸部疼痛の治療方法やその根拠となるデータ、慢性疼痛に対する理学療法や運動が生理学的に疼痛にどう働くかなどが書かれています。2009年出版ですから日進月歩の現場からしたら少し古いですが、とてもよくまとめられている本です。アメリカの整形理学療法の現場と考え方を知る良書だと思います。是非読んでみてください。