Saturday, February 25, 2012

国を動かす力

"パブリックヘルス 市民が変える医療社会 アメリカ医療改革の現場から" 細田満和子著の中ではアメリカの医療現場の現状を社会的な視点から広範囲にわたって紹介されています。その中で、社会を動かすためのアプローチの違いを国ごとに紹介していました。医療や環境改革をアメリカは市民団体や専門家の団体が豊富な資金で研究広報をおこなって政治家たちに訴えています。日本では国側が力の弱い市民団体などと手を組み社会をより良い方向に導こうとしている現状があります。アメリカの主導は市民や専門家たちで、日本の制度設計の主導は国です。

それを考えると、リハビリや感染症予防などの制度改革に対して、力を持っているのは厚労省になりますが、それが正しいのでしょうか。介護保険や維持期のリハビリの問題が示唆されている現状で、それに意見していくのが現場にいる理学療法士たちでしょう。理学療法士たちの教育や臨床力も医療制度や教育制度の影響をもろに受けます。国自体にも大いに問題はありますが、もっと理学療法士団体、他の市民団体の発言力・影響力を高めていく必要性を再認識しました。たしかにアメリカの州の理学療法士協会やAPTAなどにはそれを専門に走り回っている人が多くいますし、報告もしています。社会的仕組みは違えど、今の日本のバランスがベストでないことは確かだと思います。

スポーツ医学においても、AEDの普及や熱中症などの予防、応急処置のリテラシーなどやるべきことを多くありますが、それにも国の意向と多くの専門職団体の利害が邪魔をしていると聞きます。最終目的は何なのか(健康維持・傷害予防)もう一度確認して団体間の協力をもち、その力を強めた上で国に働きかけることが今できることかもしれません。

Friday, February 17, 2012

科学界の公用語

竹内薫氏が著書“科学嫌いが日本を滅ぼす”で、科学において言語として英語が席巻している中、日本人が戦っていくことに対してこう書いています。ノーベル賞を受賞した益川氏がなぜ受賞できたかというと小林誠氏という共同研究者が英語で論文をかけたからだろう。それを踏まえて、日本人に必要なのは英語を操る術ではなく通訳する人といかに協力して英語で発信とコミュニケーションを取っていくことかである、ということも述べています。

理学療法でもアスレチックトレーナーの分野でも、英語そこまでできないけれど優秀な研究者や臨床家は山ほどいますし、英語が堪能な日本人療法士やトレーナーもたくさんいます。ですから、英語論文を読む方法を学べとか読めとかいうことも重要ですが、この2グループの協力を日本全体でやっていくことが、日本が世界と協力してリハビリテーションやスポーツ医学の発展にコメディカルの立場から貢献していく方法なのかもしれません。日本理学療法士協会にはThe Journal of the Japanese Physical Therapy Associationという素材はありますし、人材もたくさんいます。協会や教育機関はその活用をもっとすればいいのかもしれません。

Saturday, February 11, 2012

疼痛の理学療法

理学療法士一人ひとりそれぞれの評価と治療コンセプトを持っていて各々の経験や学んだことから患者に対してアプローチしています。しかし、僕は今の科学で証明されていることを使うことは医療者としての最低限のルールだと思っています。そのプラスアルファを個々でやっていけばというのが今の考えです。

そこで必要とされるのが最新の知見と医学的根拠に基づいた治療のガイドラインや日々の研鑽(最新の雑誌を読むなどの)ですがそれも日に日に古くなったり、時間や労力に限りがあるでしょう。雑誌を全部読むなんて無理ですよね。

そこで整形外科的疼痛に対する理学療法で今アメリカの最低ラインの治療を紹介しているのが”Mechanisms and Management of Pain for the Physical Therapist" Kathleen A. Sluka Editor IASPです。腰痛や頸部疼痛の治療方法やその根拠となるデータ、慢性疼痛に対する理学療法や運動が生理学的に疼痛にどう働くかなどが書かれています。2009年出版ですから日進月歩の現場からしたら少し古いですが、とてもよくまとめられている本です。アメリカの整形理学療法の現場と考え方を知る良書だと思います。是非読んでみてください。