Saturday, March 30, 2013

保険

アメリカの保険の制度は大変複雑で不合理です。その中でも自分が経験していることを書きたいと思います。今いるSkilled Nursing Facilityという所では術後や発症間もない短期入所の方も長期入所の方もいます。前提として、この施設に入ることもできない、保険料を収められない貧しい方が多くいるということをおさえておかなければなりません。

統計をとったわけではありませんが、短期入所の方はメディケアAという米国連邦政府管轄の保険でまかなわれる方が半数、メディケアの基準に達していない、または自分で安価な民間の保険をえらびその民間の保険で保険料をまかなわれる方が半数といった印象です。長期入所の方はリハビリが必要な場合、外来扱いでメディケアBまたは民間の保険で保険料がまかなわれる仕組みです。ここで厄介になるのが民間の保険会社とのやり取りです。メディケアは重症度によってこちらの意向で必要なおおまかなリハビリ時間の枠組みを決めることができますが、安価な民間の保険会社のリハビリ時間は基本的に全体で1日1時間という短いものです。どんな重症度であろうと、理学、作業、言語が入ろうと全体で1時間です。これには無理があります。また、民間保険会社は数日リハビリでの改善が見られなくなると、または改善の度合いが小さすぎると施設でのリハビリを独断で打ち切り施設の退去を命じます。患者様によってはリハビリ以外の治療が必要な時期もあり、いつも改善が見られるわけではありません。これにも無理があります。根本のシステムはメディケアを支配しているCMSが作っているのでこれにも大きな問題があります。

他方で、アメリカの働く環境がこの時間の縛りという負のスパイラルを加速させています。現在の職場、そしてほとんどの職場が時間の効率性を求めています。先程述べた保険でまかなわられる治療時間を元に我々の働く時間と患者数を決め、生産性のある働きを数字で求められます。前提である治療時間に無理があるためその生産性という本来プラスのプレッシャーも (セラピストにはいかに効率よく治療と書類を作るか試行錯誤させるというよい面もありますが) 患者様にとってマイナスに働きます。

よくアメリカの保険料は高いと言いますが、それは本当の話です。その上、保険システムが営利主義の上に成り立っているため、患者様の方向を向いて治療することが大変難しい環境であることも間違いありません。しかし、その保険システムが治療のエビデンスを求めているため医療が科学的に進歩しているという現実もあります。アメリカの保険制度に興味が有る方は以下のアドレスにアクセスしてみてください。2011年のもののようですが、わかりやすく解説しています。それにしてもこの国の保険制度はひどいですね。

邦人・日系人高齢者問題協議会


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